テレビを見ると、東京は快晴の素晴らしい天気のようです。今日の秋田は、曇り空で、最低気温がプラスの 0.1度、最高気温は 4.0度だったようですから、それほど寒くはなかったみたいです。

下の写真は、ユリ根。お料理に使いますが、中央のものは、栽培ものだそうです。右のユリ根が野生のもの。どこか違いますよね。今日の料理に使ったのは、野生のユリ根。

20070115ユリ根 20070115栽培ものユリ根 20070115野生ユリ根

下の写真、左は、休み時間なのでしょうか、外で元気に遊ぶ小学生。山の近くにある小学校の校庭から元気な声が聞こえてきたので、遠くから写真で撮ったもの。中央、左は、例の干し柿。例というのは、ばっぱが夜なべして皮をむいて作った干し柿という意味です。本当に「あま〜い干し柿」ができました。トロッとした部分も何とも言えない風味にでき上がっていました。

20070115小学校の校庭 20070115干し柿1 20070115干し柿2

下の写真、左は、月桂樹の葉。山の帰りに取ってくるよう頼まれました。ツボミがびっしりとついています。中央は、ユリ根の料理。左は、お昼の野菜スープです。これに、月桂樹を使ったんですね。野菜の甘味が、これまたとっても「あま〜い」味に仕上がっていました。砂糖はまったく使っていないとのこと。

20070115ユリ根の料理 20070115野菜スープ

昨日の新聞に、「特産 復活への模索」ということで、西木のアケビ(あけび)油の話題が載っていました(2007.01.14 アケビ油復活)。アケビ油の中の「新規成分」を調べてみると、どうも「ジアシルグリセロール」が、その成分のようでした。

「ジアシルグリセロール」は、単純脂質という脂質の仲間で、基本の骨格が「グリセロール(グリセリン)」と「脂肪酸」でできている化合物。以前
2005.08.06 キャリアオイルの化学でもお話した通り、通常「トリグリセリド」あるいは「トリアシル」、または、「トリアシルグリセロール」といわれています。

ここで、ジアシルグリセロールやトリアシルグリセロールの基本の骨格が「グリセロール」と「脂肪酸」ということをお話しましたが、言葉の頭にでてくる「ジ」と「トリ」という部分が違うだけで、あとは、「アシルグリセロール」と、同じです。

この部分、実は脂肪酸の個数と関係しているんです。通常、中性脂肪と呼ばれている「トリアシルグリセロール」は、グリセロールという一つの化合物に、三個の脂肪酸が「エステル結合」によって作られている化合物です。そこで、

・脂肪酸が1個の場合(残り 2つは水酸基)〜 モノアシルグリセロール
・脂肪酸が 2個の場合(残り 1つは水酸基)〜 ジアシルグリセロール
・脂肪酸が 3個の場合(全て脂肪酸)〜 トリアシルグリセロール

と呼ばれています。

さて、ここからが、ちょっとややこしくなるのですが、モノアシルグリセロールを例に取って見てみたいと思います。これは、グリセロールと脂肪酸が 1個の化合物でした。そして、残り 2つは水酸基ということでした。ところで、グリセロールには、脂肪酸を結合できる部位が三ヶ所(エステル結合)ありました。

詳しく分類するためには、同じモノアシルグリセロールでも、1個の脂肪酸と 2個の水酸基を、三ヶ所のうち、どの部位に脂肪酸が結合しているのかを区別する必要がでてきます。特に、脂質の消化吸収の過程では大切となってきます。

下記の図は、脂質の消化吸収の過程が示されています。また、グリセロールと脂肪酸の関係についても書かれています(図の右側)。

・1位の位置に、脂肪酸が1個の場合(残り 2つは水酸基)
〜 1-モノアシルグリセロール
・2位の位置に、脂肪酸が 1個の場合(残り 2つは水酸基)
〜 2-モノアシルグリセロール
・3位の位置に、脂肪酸が 1個の場合(残り 2つは水酸基)
〜 3-モノアシルグリセロール

では、「ジアシルグリセロール」の場合は、どうなるのでしょうか。これには、三つのケースが考えられますよね。

・1位の位置と2位の位置に、脂肪酸が各1個の場合(残り 1つは水酸基)
〜 1,2-ジアシルグリセロール
・1位の位置と3位の位置に、脂肪酸が各1個の場合(残り 1つは水酸基)
〜 1,3-ジアシルグリセロール
・2位の位置と3位の位置に、脂肪酸が各1個の場合(残り 1つは水酸基)
〜 2,3-ジアシルグリセロール

20070115脂肪の消化

食品から摂取される脂質の大部分は、トリアシルグリセロールだそうです。これが舌由来のリパーゼ(上の図には書かれていませんが)により、一部(10〜20%くらい)が分解されます。

図には描かれていませんが、「分解」といのは、トリアシルグリセロールが、一部、モノアシルグリセロールとジアシルグリセロールと脂肪酸とに分解されるということになります。

これは、舌由来のリパーゼによって、トリアシルグリセロールに結合している三つの脂肪酸が、一つだけ、あるいは二つ切り離されることで、ジアシルグリセロール(一つだけ脂肪酸が切り離された)に、あるいは、モノアシルグリセロール(二つの脂肪酸が切り離された)となることを意味します。

もちろん、この段階で分解(消化)されなかったものは、脂肪酸が切り離されていませんから、トリアシルグリセロールとして、そのまま十二指腸までやってきます。

十二指腸では、膵臓由来の膵リパーゼによってさらに分解を受ける事になります。その様子が、上の図の (1) 〜 (4) で示されています。

(1) トリアシルグリセロールの分解(消化)
・おもしろい事に、1位と3位に結合している脂肪酸を選択的に分解するのが膵リパーゼ
・ということは、2位の脂肪酸の結合を残したままの 2-モノアシルグリセロールへ分解されることになる
・トリアシルグリセロールは、2-モノアシルグリセロールと脂肪酸に分解される

(2) 残された 2-モノアシルグリセロールの分解(消化)
・一部の 2-モノアシルグリセロールは、グリセロールと脂肪酸に分解される

(3) 2-モノアシルグリセロールを再びトリアシルグリセロールへ合成
・消化吸収された分解物は、小腸上皮細胞内で、再度トリアシルグリセロールへと合成される
・小腸での合成の過程は、この経路が大部分

(3-1、3-2) 脂肪酸回路からの合成
・脂肪酸は、そのままではトリアシルグリセロールの合成には関わる事ができない
・そのため、アシルCoA と呼ばれる活性型の脂肪酸となり
(3) の 2-モノアシルグリセロールと直接反応して、ジアシルグリセロールへ 〜 (3-1)
・さらに、もう一つの活性型の脂肪酸と反応することで、トリアシルグリセロールへと合成 〜
(3-2)

(4) グリセロール3-リン酸経路によるトリアシルグリセロールの合成
(3) とは別の経路によるトリアシルグリセロールの合成
・グルコースから導きだされたグリセロール 3-リン酸からジアシルグリセロールの合成

以上のように、とても複雑な脂質の消化、吸収の過程が体の中では起こっているのですね。今見てきたように、トリアシルグリセロールは、結局は、モノアシルグリセロールへ分解され、再びトリアシルグリセロールへ合成されることがわかりました。

ここで、アケビの油に含まれている「ジアシルグリセロール」との関係で大切な事は、

・ジアシルグリセロールといえども、消化吸収され、再びトリアシルグリセロールへ合成される
・小腸での消化吸収の過程では、2-モノアシルグリセロールの経路からトリアシルグリセロールの大部分が合成される
・膵リパーゼは、1位と3位の結合部位に結合している脂肪酸(1,3位のエステル結合)を選択的に分解する

ということになるのではないでしょうか。さて、ようやく、アケビの油のお話へ戻ってみましょう。

・アケビ油は一般の食用油に比べ、体内で吸収されにくという特性を持つ

ということでした。多分一般の食用油というのが、トリアシルグリセロールという油ということだと思います。

ところが、アケビ油には、ジアシルグリセロールという油が含まれているため、「体内で吸収されにくという特性を持つ」ということのようですが、今まで見てきたように、ジアシルグリセロールといえども、同じように分解され、トリアシルグリセロールへと合成されるかと思います。

ただ、ジアシルグリセロールのうち、2位の位置に、脂肪酸が結合したジアシルグリセロール以外の「1位の位置と3位の位置に、脂肪酸が各1個の場合(残り 1つは水酸基)」という構造を持つ 1,3-ジアシルグリセロールは、トリアシルグリセロールには合成されない、という考え方もあるようです。

そのことが、「体内で吸収されにくい特性を持つ」ということにつながるのでしょうか。

下記の図は、今まで見てきた脂肪の消化吸収だけではなく、消化吸収されたトリアシルグリセロールが体内でどのように代謝されるのかを示しています。

小腸上皮細胞で消化吸収され、合成されたトリアシルグリセロールは、カイロミクロンというリポタンパク質(
2007.01.07 人間が飲んではいけないやせ薬)の衣をまとってリンパ管から、左鎖骨下リンパ節を経由して、血管系へと移動していきます。〜 (1)(2)

20070115脂肪の代謝

トリアシルグリセロールは、一度グリセロールと脂肪酸へ分解され、再びトリアシルグリセロールへと合成されて、リンパ管、血管を経由して筋肉や肝臓、そして脂肪組織へと運ばれます。上の図の、

(3) トリアシルグリセロールがリポプロテインリパーゼという酵素の働きによって分解
・リポプロテインリパーゼという酵素が、またまた、トリアシルグリセロールを脂肪酸(遊離脂肪酸)とグリセロールへ分解

(4) グリセロールの合成
(3) で分解されたグリセロールは使われないで、別の経路により合成されたグリセロールを利用
・それが、グリセロール 3- リン酸の経路から作られたグリセロール

(5) トリアシルグリセロールをジアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼという酵素の働きで合成
(3) で分解された遊離脂肪酸と、(4) で合成されたグリセロールから、トリアシルグリセロールが合成される
・そのときに働くのが、とても長い名前の酵素
・ジアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼという酵素が働く

(6) 脂肪の分解
・脂肪の分解は、生体の必要に応じて、ホルモンによって行われる
・リパーゼという酵素が分解へ働く

ということですから、何故、このように分解、合成を繰り返しているのでしょうか。理由があっての脂肪の代謝ということを考えると、本当にすごい仕組みが生体には備わっていますね。

以上を見てくると、トリアシルグリセロールに合成されないとする 1,3-ジアシルグリセロールは、脂肪の代謝にも関係しないようですから、どこへ消えてしまうのでしょうか。エネルギーとしてすぐに使われてしまうのでしょうか。

ウエブ上では、いろいろな議論が数多く投稿されているようですが、ひまわりの頭では、今日見てきたことまでが限界のようです。もっと理解を深めて、後日投稿したいと考えています。

そうそう、今回の焦点となっていた「ジアシルグリセロール」ですが、構造や代謝の仕組みを中心として見てきました。これらの観点からは、「体内で吸収されにくという特性」がどのような仕組みで発揮されるのかの理解を深める事ができました(解決ではありませんけど)。

また、脂肪細胞でのトリアシルグリセロールの合成には、グルコースから得られたグリセロールが使われているため、食事で「脂肪」と「糖質」を一緒に食べると何だか、いっぱいトリアシルグリセロールが脂肪組織へ蓄積されそうです。

肥満は、いろんな要因がからんでいますが、脂肪の代謝の観点からは、分解と合成ということが大切ということがわかります。

そのため、
(5) で見てきたトリアシルグリセロール合成へ働きかける長い名前の酵素「ジアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼ」の活性を抑えるような働きを模索しているようです。

この酵素は、脂肪の合成を促すと同時に、リン脂質の不足を招くためとても重要な酵素のようです。

いろいろ見てきましたが、別の、観点からは、

・アケビ油は、乾燥重量で 75キロほどの種から、約8リットルしか採取されない
・分解されにくく、他の油に比べ粘性が低いため、化粧品などの用途にも考えられる

という事柄に関して、ジアシルグリセロールの基本的な構造だけではなく、今度は、脂肪酸の種類がとても大切になってきます。検討しないといけない事柄ばかりがでてきますね。なお、脂質の消化吸収、代謝に間違いがあれば、ご指摘いただければ幸いです。

● 関連記事
植物油の化学関連の目次
・「2007.01.15 アケビ油とジアシルグリセロール」

2007.01.14 アケビ油復活
2006.06.29 アケビの油は油の王様
2005.09.13 植物油の消化吸収
2005.08.06 キャリアオイルの化学