今日の秋田市、やや曇りがちな天気から、晴れ間が広がり、暑い一日となりました。それでも、昨日よりは最高気温が低く、29.4度。でも、昨日より暑く感じてしまうのはひまわりだけでしょうか。いよいよ今日から秋田の竿燈祭が始まります。駅方面に向かう浴衣を着た女性の姿が目につきます。観光バスも増えてきました。
今日は植物療法のセミナーの日、生徒さんが八甲田へ旅行した際に買い求めたお菓子、皆さんへおすそわけ。ベースが南部せんべいで、タマネギ、ホタテ、イカがトッピングされていました。上の写真中央は、丸ナスの漬け物(麹漬け)。何度も紹介してますが、西洋ナツユキ草の花がきれいに咲いていました。
上の写真、左は、コリアンダーの花です。これが結実すると、種子ができますが、カレーの粉で有名ですよね。中央は、ウスベニアオイの花。右は、アップルミントの花です。
さて、先日来ドーパミン関係のお話が続きました。今日のブログタイトル「パーシャルアゴニスト」なんとも意味不明な言葉です。この言葉の意味は、「2006.07.20 植物の二面性と状況に応じて作用する薬」で投稿した「薬」の正体を解き明かすキーワードとなります。
そして、このメカニズムを理解するために「2006.07.29 大脳基底核とDA」がとても役に立ちます。もともと最初に投稿した記事の薬は、抗精神病薬として開発されたものです。
抗精神病薬というのは、統合失調症という、幻覚や、妄想、幻覚など多彩な症状を示す精神疾患に対して処方される薬全般をいうようです。この疾患は中脳辺縁系や中脳皮質系のドーパミン作動性精神系からのドーパミンの活性が過剰な状態になった場合に発症するといわれています。
こういったドーパミンの過剰な活動が原因で起こるわけですから、今まではそのドーパミンを受け取る受容体のうち、D2受容体に対して受け取ることが出来なくする、いわゆる「遮断」するための薬が使われていたそうです。この作用の仕組みは、「2006.07.29 大脳基底核とDA」をご覧いただければご理解いただけると思います。
・興奮性のグルタミン酸という神経伝達物質を、D2受容体を持つ線条体の神経細胞が受け取り、最終的には「視床」を抑制する方向に作用。
・黒質緻密部から放出されるドーパミンという神経伝達物質を、D2受容体を持つ線条体の神経細胞が受け取り、抑制され、最終的には「視床」に脱抑制、すなわち、活性化に作用。
このD2受容体が受け取るドーパミンを遮断すれば、最終的には「視床」を抑制する方向へ働くわけですから、結果的には、ドーパミンの過剰な働きによる「精神疾患」が改善できる、ということになります。ところが、遮断しすぎると、反対に、視床を抑制する方向へ傾き過ぎますから、パーキンソン病などの症状が起こる可能性もあるわけです。
そこで登場したのが、ブログタイトルの「パーシャルアゴニスト」作用を持つ、冒頭で述べた新しい薬です。ドーパミンが過剰に活動したときは、その活動を抑制する「アンタゴニスト」として作用し、反対に、ドーパミンが低下したときに刺激する「アゴニスト」として働く、というものです。言葉の意味は後ほど明らかにしたいと思いますが、その仕組みを、下記のように図にしてみました。
ポイントになるのが、間接的な線条体 - 淡蒼球回路での、ドーパミンを受け取るD2受容体です。
1. もともと、大脳皮質から、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸が放出され、その刺激が、淡蒼球内節で抑制性の神経伝達物質であるギャバが、視床を「抑制」する方向で働くことを示しています。
2. 黒質緻密部から、ドーパミンが過剰に働く方向で D2受容体に作用すると、結果的に視床の「脱抑制」を過剰に促進、すなわち、過剰に活動することで、精神疾患を引き起こすことが分かっています(やや太い矢印で示してあります)。
3.このとき、今までの抗精神病薬のように、D2受容体がドーパミンを受け取るのを完全に遮断してしまうと、最終的に視床の活動が抑制されますから、精神疾患の改善に作用することになります。この作用が、ドーパミンの働きを抑制する働きである「アンタゴニスト」といわれるものです。
もともと、この言葉は、次の説明にでてくる「アゴニスト」に対応するものになります。神経伝達物質は、専門的には「細胞内のシグナル伝達を引き起こす物質」としてとらえられているようです。この引き起こす物質(この場合は、ドーパミンになります)を「アゴニスト(作動剤)」と呼んでいます。
そして、この作動剤と拮抗的に作用して、その作用を減退させる物質は「アンタゴニスト(拮抗剤)」と呼ばれています。ですから、ドーパミンという細胞内のシグナル伝達を引き起こす物質が、拮抗的に働くよう作用するアンタゴニストとして表現されるわけです。
ただ、遮断し過ぎると、その弊害もでるために、図の「3.」のケースのように、完全に、ドーパミンを遮断するのではなく、拮抗的に働くアンタゴニスト(この場合はドーパミン)が、微弱ではあるけれど部分的な活性を示す物質として働くようにしたのが、問題の「パーシャルアゴニスト」といわれるものです。何かややこしいですよね。
簡単にすると、図の 3. のように、D2受容体にフィルターをかけたように、でも、完全に遮断するのではなく、部分的にそのフィルターをドーパミンが通過できるように働くようにしたもの、と理解するとわかりやすいかと思います。そうすると、過剰なドーパミンを完全に遮断していないことになりますから、最終的に視床が抑制されることもなくなります。
4. 今度は、もともとドーパミンが少ない場合ですが、この場合、D2受容体を完全に遮断する形で薬が作用すると、視床が抑制されることになり、パーキンソン病などの障害がでてしまうことになります。そのため、ドーパミンが、脳内のシグナル伝達を引き起こす物質であるアゴニストとして働くよう、3. と同じように完全に遮断するのではなく、微弱ではあるけれど部分的な活性を示す物質として働くようになっています。これも「パーシャルアゴニスト」といわれるものです。
あれっ、拮抗的に働く 3.の場合のように、アンタゴニストを部分的に働くようにするのであれば、パーシャルアンタゴニストというのが正解なのでは、と気づかれた方がおられるかと思います。実は、パーシャルアンタゴニストとパーシャルアゴニストは、同じような意味なのではないかとひまわりも思います。
ようは、ドーパミンを受け取るD2受容体に、部分的にフィルターをかけた状態にして、過剰に流れる場合は、フィルターとしての役目が働き、結果的に抑制されたことになり、また、それほど過剰ではなく弱い場合には、フィルターとしてあまり働かなく、結果として、ドーパミンの作用が働くこととなります。このように、ドーパミンの活動が過剰であれば「抑制」し(アンタゴニスト)、低下の場合は「刺激」を与える作用(アゴニスト)として働く薬は、「パーシャルアゴニスト」と呼ばれる薬の分類に入ることになるようです。
本当にややこしいですね。ですから、ドーパミンそのものの調整をするのではなく、受容体に部分フィルターをかけて調整するところにこの薬の特徴があるようです(実際には、薬がD2受容体に作用し、本当のドーパミンがその受容体に部分的にしか作用できなくしている)。ただ、ひまわりは、専門家ではないので、間違った部分や解釈があれば、ぜひ連絡いただければ幸いです。
脳の神経伝達物質には、ドーパミンだけでなくいろいろな種類があります。「2006.07.24 脳幹に配置された神経核」でもご紹介しているように、B系列のセロトニン、アセチルコリンなど、いろいろな神経伝達物質の働きによって、精神活動が正常に調整されています。今度は、ドーパミン以外の神経伝達物質の働きについてもお話もしたいと思っています。今のひまわりは、ドーパミンが過剰に出ている状態ですね。
● 関連情報
○「脳・神経関連の目次」
○「薬と身体関連の目次」
・「2006.07.29 大脳基底核とDA」
・「2006.07.27 サブスタンスPとDA」
・「2006.07.24 脳幹に配置された神経核」
・「2006.07.21 脳内神経伝達物質 DA」
・「2006.07.20 植物の二面性と状況に応じて作用する薬」
・「2006.06.11 なまり言語切り替えと脳の働き」
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今日は植物療法のセミナーの日、生徒さんが八甲田へ旅行した際に買い求めたお菓子、皆さんへおすそわけ。ベースが南部せんべいで、タマネギ、ホタテ、イカがトッピングされていました。上の写真中央は、丸ナスの漬け物(麹漬け)。何度も紹介してますが、西洋ナツユキ草の花がきれいに咲いていました。
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上の写真、左は、コリアンダーの花です。これが結実すると、種子ができますが、カレーの粉で有名ですよね。中央は、ウスベニアオイの花。右は、アップルミントの花です。
さて、先日来ドーパミン関係のお話が続きました。今日のブログタイトル「パーシャルアゴニスト」なんとも意味不明な言葉です。この言葉の意味は、「2006.07.20 植物の二面性と状況に応じて作用する薬」で投稿した「薬」の正体を解き明かすキーワードとなります。
そして、このメカニズムを理解するために「2006.07.29 大脳基底核とDA」がとても役に立ちます。もともと最初に投稿した記事の薬は、抗精神病薬として開発されたものです。
抗精神病薬というのは、統合失調症という、幻覚や、妄想、幻覚など多彩な症状を示す精神疾患に対して処方される薬全般をいうようです。この疾患は中脳辺縁系や中脳皮質系のドーパミン作動性精神系からのドーパミンの活性が過剰な状態になった場合に発症するといわれています。
こういったドーパミンの過剰な活動が原因で起こるわけですから、今まではそのドーパミンを受け取る受容体のうち、D2受容体に対して受け取ることが出来なくする、いわゆる「遮断」するための薬が使われていたそうです。この作用の仕組みは、「2006.07.29 大脳基底核とDA」をご覧いただければご理解いただけると思います。
・興奮性のグルタミン酸という神経伝達物質を、D2受容体を持つ線条体の神経細胞が受け取り、最終的には「視床」を抑制する方向に作用。
・黒質緻密部から放出されるドーパミンという神経伝達物質を、D2受容体を持つ線条体の神経細胞が受け取り、抑制され、最終的には「視床」に脱抑制、すなわち、活性化に作用。
このD2受容体が受け取るドーパミンを遮断すれば、最終的には「視床」を抑制する方向へ働くわけですから、結果的には、ドーパミンの過剰な働きによる「精神疾患」が改善できる、ということになります。ところが、遮断しすぎると、反対に、視床を抑制する方向へ傾き過ぎますから、パーキンソン病などの症状が起こる可能性もあるわけです。
そこで登場したのが、ブログタイトルの「パーシャルアゴニスト」作用を持つ、冒頭で述べた新しい薬です。ドーパミンが過剰に活動したときは、その活動を抑制する「アンタゴニスト」として作用し、反対に、ドーパミンが低下したときに刺激する「アゴニスト」として働く、というものです。言葉の意味は後ほど明らかにしたいと思いますが、その仕組みを、下記のように図にしてみました。
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ポイントになるのが、間接的な線条体 - 淡蒼球回路での、ドーパミンを受け取るD2受容体です。
1. もともと、大脳皮質から、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸が放出され、その刺激が、淡蒼球内節で抑制性の神経伝達物質であるギャバが、視床を「抑制」する方向で働くことを示しています。
2. 黒質緻密部から、ドーパミンが過剰に働く方向で D2受容体に作用すると、結果的に視床の「脱抑制」を過剰に促進、すなわち、過剰に活動することで、精神疾患を引き起こすことが分かっています(やや太い矢印で示してあります)。
3.このとき、今までの抗精神病薬のように、D2受容体がドーパミンを受け取るのを完全に遮断してしまうと、最終的に視床の活動が抑制されますから、精神疾患の改善に作用することになります。この作用が、ドーパミンの働きを抑制する働きである「アンタゴニスト」といわれるものです。
もともと、この言葉は、次の説明にでてくる「アゴニスト」に対応するものになります。神経伝達物質は、専門的には「細胞内のシグナル伝達を引き起こす物質」としてとらえられているようです。この引き起こす物質(この場合は、ドーパミンになります)を「アゴニスト(作動剤)」と呼んでいます。
そして、この作動剤と拮抗的に作用して、その作用を減退させる物質は「アンタゴニスト(拮抗剤)」と呼ばれています。ですから、ドーパミンという細胞内のシグナル伝達を引き起こす物質が、拮抗的に働くよう作用するアンタゴニストとして表現されるわけです。
ただ、遮断し過ぎると、その弊害もでるために、図の「3.」のケースのように、完全に、ドーパミンを遮断するのではなく、拮抗的に働くアンタゴニスト(この場合はドーパミン)が、微弱ではあるけれど部分的な活性を示す物質として働くようにしたのが、問題の「パーシャルアゴニスト」といわれるものです。何かややこしいですよね。
簡単にすると、図の 3. のように、D2受容体にフィルターをかけたように、でも、完全に遮断するのではなく、部分的にそのフィルターをドーパミンが通過できるように働くようにしたもの、と理解するとわかりやすいかと思います。そうすると、過剰なドーパミンを完全に遮断していないことになりますから、最終的に視床が抑制されることもなくなります。
4. 今度は、もともとドーパミンが少ない場合ですが、この場合、D2受容体を完全に遮断する形で薬が作用すると、視床が抑制されることになり、パーキンソン病などの障害がでてしまうことになります。そのため、ドーパミンが、脳内のシグナル伝達を引き起こす物質であるアゴニストとして働くよう、3. と同じように完全に遮断するのではなく、微弱ではあるけれど部分的な活性を示す物質として働くようになっています。これも「パーシャルアゴニスト」といわれるものです。
あれっ、拮抗的に働く 3.の場合のように、アンタゴニストを部分的に働くようにするのであれば、パーシャルアンタゴニストというのが正解なのでは、と気づかれた方がおられるかと思います。実は、パーシャルアンタゴニストとパーシャルアゴニストは、同じような意味なのではないかとひまわりも思います。
ようは、ドーパミンを受け取るD2受容体に、部分的にフィルターをかけた状態にして、過剰に流れる場合は、フィルターとしての役目が働き、結果的に抑制されたことになり、また、それほど過剰ではなく弱い場合には、フィルターとしてあまり働かなく、結果として、ドーパミンの作用が働くこととなります。このように、ドーパミンの活動が過剰であれば「抑制」し(アンタゴニスト)、低下の場合は「刺激」を与える作用(アゴニスト)として働く薬は、「パーシャルアゴニスト」と呼ばれる薬の分類に入ることになるようです。
本当にややこしいですね。ですから、ドーパミンそのものの調整をするのではなく、受容体に部分フィルターをかけて調整するところにこの薬の特徴があるようです(実際には、薬がD2受容体に作用し、本当のドーパミンがその受容体に部分的にしか作用できなくしている)。ただ、ひまわりは、専門家ではないので、間違った部分や解釈があれば、ぜひ連絡いただければ幸いです。
脳の神経伝達物質には、ドーパミンだけでなくいろいろな種類があります。「2006.07.24 脳幹に配置された神経核」でもご紹介しているように、B系列のセロトニン、アセチルコリンなど、いろいろな神経伝達物質の働きによって、精神活動が正常に調整されています。今度は、ドーパミン以外の神経伝達物質の働きについてもお話もしたいと思っています。今のひまわりは、ドーパミンが過剰に出ている状態ですね。
● 関連情報
○「脳・神経関連の目次」
○「薬と身体関連の目次」
・「2006.07.29 大脳基底核とDA」
・「2006.07.27 サブスタンスPとDA」
・「2006.07.24 脳幹に配置された神経核」
・「2006.07.21 脳内神経伝達物質 DA」
・「2006.07.20 植物の二面性と状況に応じて作用する薬」
・「2006.06.11 なまり言語切り替えと脳の働き」