今日の秋田は、昨日とはうってかわり、とても晴々とした爽やかな秋晴れ。外はもう日が沈み(とっくに)寒さがしみ込んできます。今年の紅葉は、きっときれいになるでしょうね。さて、このシリーズも三回をかさね、ようやく今回が最終回です。どのようにまとまったか(まとまらなかったか)、多少長くなりますが、お読みいただき、間違っているところがあれば、どんどん指摘して下さいね。

20051016チェリーセージ 20051016お菓子コーナー チェリーセージの花となぜかコンビニのお菓子コーナー

とてもいい天気で、チェリーセージの紫がかった赤(ラズベリーローヤル)が映えていました。
たまにしか行きませんが、コンビニのお菓子コーナー。いつも思うのは、食欲の秋を全面的に前にだし、そろえてあるのは、「チョコ菓子と食べるとバリバリ音のするお菓子」。私でもうわぁ〜食べたいって思うんだもの、皆さんの街ではいかがでしょうか 。

「植物エストロゲンを摂取している人は肺ガンを発症するリスクが低くなった」という点について、これもまたとても複雑なメカニズムが働いているようです。この点についても、肺ガンとの直接的な説明までにはいきませんが、エストロゲンと直接関係の深い、エストロゲンを受け取る受容体との関係に答えを導くことができるようです。

性ホルモンは昨日もお話したように、ステロイドホルモンといって、コレステロールから作られるホルモンです。そのコレステロールから、「プレグネノロン」が作られますが、そこから先のルートは二つに分かれます。

一つは、黄体ホルモン(女性ホルモン)を経由して、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン(男性ホルモン)、そしてエストラジオール(女性ホルモン - エストロゲン)が作られるルートがあります。

このルートの途中に、ヒドロキシプロゲステロンが作られますが、その先のルートにも二つのルートがあって、一つは、先に示したテストステロン(男性ホルモン)です。もう一つが、副腎皮質ホルモンのコルチゾールです。
以下続きです

このルートによって、男性ホルモン経由で女性ホルモンが作られ、副腎皮質ホルモンのコルチゾールも作られるということです。
昨日、生体がストレス下にさらされたとき、自己応答性の免疫システムを発動して、自らの細胞のガン化に備えるために、

・視床下部、下垂体経由で副腎皮質刺激ホルモンの放出
・それと同時に、エストロゲンの放出

などによって、免疫のシステムを古い免疫システムへ移行する、ということをお話しました。エストロゲンと、副腎皮質ホルモンが、このように同じルートを通して連動しているというのも、生体の合目的性にかなうものとして備わっているんですね。

また、プレグネノロンから別のルートで、デビドロエピアン経由でエストラジオール(女性ホルモン - エストロゲン)とテストステロン(男性ホルモン)が作られます。

これらの代謝には、いろいろな酵素が関与していますが、プレグネノロンから黄体ホルモンが作られるときに、ビタミンEが必要とされます。ビタミンEが不足した場合かどうかは難しい問題ですが、別ルートのデビドロエピアンも用意されているところが本当にすごいところです。

エストロゲンそのものはいろいろな種類があるようですが、主に、上記ルートででてきたエストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)に区分することができます。

エストラジオールは、活性が高く、排卵が近づくと分泌量が増大するホルモンです。また、エストロンは、一般にエストラジオールに比べ活性が弱く、加齢とともにその量は上昇し、閉経後には、エストロゲンの主成分となります。エストリオールは、主として、エストラジオールとエストロンの肝臓での代謝産物で、卵巣での産生は非常に少ないホルモンです。

何で、こんなに複雑な代謝の経路や種類を上げたかといいますと、この代謝に「ガンを誘発」する物質が作られたり、「ガンを抑制」する物質が作られたりする「からくり」があるからです。その「からくり」をにぎっているのは、どうも「シトクローム P450」が関係あるようです。「シトクローム P450」については、
2005.08.28 シトクロームP-450 を参照下さい。

特に乳ガンの発生因子として、エストラジオールが、「シトクローム P450」によって「16-α-ヒドロキシエストロン」へと変換されることにより、「ガンを誘発」するリスクを高めます。この「16-α-ヒドロキシエストロン」は、強力なエストロゲン作用を示すと言われています。

一方、エストラジオールが、「シトクローム P450」によって「2-ヒドロキシエストロン」へと変換されることにより、「ガンを抑制」する因子として働きます。この「2-ヒドロキシエストロン」は、抗エストロゲン作用を示すと言われています。

どういう条件で、「16-α-ヒドロキシエストロン」となったり、「2-ヒドロキシエストロン」となるかは、「脂肪組織」との関連が指摘されていますが、まだ明らかにされていないようです。このれらの代謝では、例えば、DDT とかダイオキシンなどの「ホルモン攪乱」の因子がよく出てくるようです。「シトクローム P450」が登場しているわけですから、コレステロールやステロイドホルモンなどの生合成や、薬物などの化学物質の代謝(肝臓)など、とても重要な酵素という観点から、それも納得できる話かと思います。

さて、話を本題へ戻しましょう。

それは、「植物エストロゲンを摂取している人は肺ガンを発症するリスクが低くなった」ということです。

ステロイドホルモンは、細胞膜ではなく、細胞質の中の受容体に結合して効果を発揮します。

植物由来のイソフラボンは、その構造がステロイドホルモンに似ているんだそうです。ですから、ステロイドホルモンの受容体に結合することが可能です。しかし、その作用は、エストロゲンほど、性ホルモン様作用は強くなく、受容体との関係でも結合の状態が緩いといわれています。

そして、次のような事が起こるんですから不思議ですね。

植物由来のイソフラボンは、とても穏やかなエストロゲン様作用を持っており、更年期を迎えた不定愁訴の軽減に働きます。そして、おもしろいのは、エストロゲンが過剰な場合には、エストロゲンを受け取る受容体に「植物由来のイソフラボン」が結合することで、本来のエストロゲンの結合をさえぎる形で、抗エストロゲン作用を示します。

よって、ガンの発症するリスクを低減する形で作用するということになります。どちらにも働くということで、「バランスをとる」作用といえるのではないでしょうか。

ただし、イソフラボンには色々な種類があり、非常に強い働きのあるものもあるそうです。したがって、すべての「植物由来」のイソフラボン(数種類の物質の総称だそうです)が「バランスをとる」作用として働くわけではないということを注意しなければいけないと思います。

また、先に示した、エストラジオールを「16-α-ヒドロキシエストロン」の代謝ではなく「2-ヒドロキシエストロン」の代謝へ導く作用があるといわれているものに、「インドール3カルビノール」という物質がありますが、これを多く含んでいるのがカリフラワーやブロッコリーなんだそうです。

長くなりましたが、まとめです。

1. 交感神経緊張は、免疫細胞の顆粒球を活性化して、最終的には「ガンの発生」のリスクを高める。

2. 生体は、そのリスクを排除しようとして、免疫システムを「外来の抗原」に対する防御システム(新しい免疫システム)を「自己応答性」の防御システム(古い免疫システム)へ一時的に切り替える。

3. その切り替えの役に、ステロイド骨格を持つ「副腎皮質ホルモンやエストロゲン」が関与している。

4. エストロゲンは、月経周期や妊娠、出産のための生殖器の成熟などを促す働きを持っているが、同時に、妊娠を成功させるため、免疫系のシステムを古い免疫システムへ移行する方向へと働らく。

5. したがって、エストロゲンそのものは、「ガンを誘発する因子」としてではなく、生体の合目的性にそくした形で働き、同時に「ガンの誘発」を抑制する形でも働く。

6. ところが、それらの状態は、アドレナリン受容体を持つ「顆粒球、 NK 細胞、胸腺外T細胞」などを配置するため、さらなる交感神経緊張は、最終的には「ガンを誘発する因子」としてそのリスクを高めてしまう。

7. 植物性ホルモンは、特異的に働き、エストロゲンが不足しているときには、エストロゲン様物質として受容体に結合し、エストロゲンが過剰の場合は、そのエストロゲンをブロックする形で受容体に結合する。

8. 結果として、植物性ホルモンは「ガンの誘発する因子」のリスクを低減する働きをする。

しかし、本題である、女性ホルモンと「肺ガン」との関係については、女性ホルモンと「子宮や卵巣、乳房など」に発生する「ガン」との関係ほど、なかなか説明がうまくできませんでした。まだまだ内容が十分とはいえませんし、間違っている場合もあるかと思いますが、そのときは、温かいコメントをぜひ残して下さいませ。

最後になりましたが、安保氏の著書で、「未来免疫学」という本がありますが、その中の文章とても印象に残ったので、ご紹介させていただきたいと思います。

「そもそも単細胞から多細胞へ進化した生物が、ある目的に向かって動こうとするとき、体内の各器官を同調させるために発達させたのが自律神経であった。神経伝達物質もそうだが、ホルモンもサイトカインも、その同調の連絡を受け持って、「さあ、いま、一緒に働くときですよ」と細胞に呼びかけるシグナルにすぎない。

もっと言えばそのシグナルとは、栄養として取り込んだ物質が酸化されつつ排泄されていく途上の酸化物である。私は、「排泄の途中の物質」という意味で、よく「途中排泄物 」という少々誤解を招きそうな言葉で呼んでいるが、それぞれのシグナルは、自分が持つ酸素分子を使って細胞にストレスを与え、細胞を驚かせて仕事をしている。細胞たちが驚く反応を共有することが、自律神経による同調なのだと言い換えてもよい。

サイトカインの種類がどれだけ多く見つかっても、細胞を驚かすしくみがたくさんあるというだけのことである。「未来免疫学」を標榜する私は、「サイトカイン、おそれるに足らず」、と、本気で思っているのである。」

やっぱり「気持ちや心のもちよう」ですね。みなさん。ところで、この記事を書いた「ひまわり」は、かなり交感神経が緊張した状態が続いたようです。ちょっと「副交感神経」側へ傾けないと、ガンの二の前を踏んでしまいそうです。

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