植物油は、大きな区別からすると「脂質」という分類になります。その中でも、一般には「中性脂肪」という呼び名で呼ばれていますが、これは、前回キャリアオイルの化学(2005.08.06)でも投稿したように、「トリグリセリド(トリアシルグリセロール)」といって、一つのグリセリンに、三つの脂肪酸がくっついた状態のモノをいいました。

2007.01.15 アケビ油とジアシルグリセロール

この脂肪は、そのままでは、とても大きな存在なので、小さくしないと(消化)小腸から吸収することはできない体の仕組みになっています。一般的には、消化酵素である「リパーゼ」により、小さく分解されて、先ほどいった、もとの「グリセリン」と、「脂肪酸」として小腸から吸収されて、リンパ管経由で鎖骨下静脈へ運ばれていきます。

しかし、ここでもう少し詳しく見ていくと、グリセリンに三つの脂肪酸がくっついた状態の脂肪は、小腸でとても複雑なメカニズムで「消化」、「吸収」されているようです。簡潔に表現すると(簡潔でもないか)、

1. 胃の中で、舌由来のリパーゼにより一部分解、このときに

・ トリグリセリドの構造は(グリセリンと三つの脂肪酸という構造)、グリセリンと二つの脂肪酸(ジグリセリド(ジアシルグリセロール))の構造やグリセリンと一つの脂肪酸の構造(モノグリセリド(モノアシルグリセロール))、そして、単体の脂肪酸(遊離脂肪酸)とともに、エマルション(乳化した状態)をつくります。つまり、ここでは、あんまり分解できないということです。

2. 十二指腸で、膵臓由来のリパーゼにより分解されますが、このときの

・リパーゼは、おもしろいことに、トリグリセリドの構造をとっている脂肪酸のうち、一つ目(1位)の脂肪酸と三つ目(3位)の脂肪酸の(エステル)結合に対してだけ、作用するんだそうです。ということは、二つ目(2位)の脂肪酸の(エステル)結合には作用しないため、グリセリンと二つ目(2位)の脂肪酸の(エステル)結合した「モノグリセリド(2-モノグリセリド)」と分解された脂肪酸ができることになります。

・でも、ある特定の脂肪酸の(エステル)結合だけを選択的に分解する「リパーゼ(膵リパーゼ)」だけではなく、非特異的(どの脂肪酸の(エステル)結合にも作用する)に働くリパーゼにより、先ほどのまだ分解されていない「2-モノグリセリド」の一部はグリセリンと脂肪酸に分解されます。

・結局、完全には分解されない「2-モノグリセリド」、そして、完全に分解されたグリセロールと脂肪酸の三つが、小腸の上皮細胞へ取り込まれます

3. ややこしいのは、まだ続きます。吸収されたモノは、何とせっかく粉々に分解したのに、また「トリグリセリド」に合成されるんです。

・特に先ほどの「2-モノグリセリド」が、酵素の働きによって、脂肪酸(正確にはアシルCoA)と結合して「ジグリセリド」、もう一回結合して、トリグリセリドになる経路の大部分を占めているんだそうです。

・そして、血中で運びやすいようにリポタンパクといわれる運搬屋のタンパク質の力などをかりて、リンパ管から血液中に運ばれていきます。

4. ちょっと興味があるのは、中鎖脂肪酸、どこかできいたことありませんか?そうですね、ダイエットに中鎖脂肪酸などと宣伝していますね。あの脂肪酸のことですが、この脂肪酸は炭素数が8〜10個の脂肪酸です。

・この脂肪酸は、比較的水溶性で、胆汁によって乳化した状態にする必要がなく、炭素数の多い長鎖脂肪酸に比べると、リパーゼによって早く分解されます。

・この中鎖脂肪酸は、分解された後、トリグリセリドに再合成されないで、そのまま分解された脂肪酸のまま「門脈循環」経由で肝臓で利用されます。

ようは、体内に皮下脂肪として蓄積される前に、エネルギーとして利用されるということなんです。

植物油の消化吸収を、投稿したのは、このことが、皮膚における経皮吸と多いに関係があるからなんです。キーワードは、分解されて「とても小さい単位で吸収」される。吸収されたモノは「再び合成される」ですかね。ルールからはずれる変なモノは、中鎖脂肪酸ですね。

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植物油の化学関連の目次
2007.01.15 アケビ油とジアシルグリセロール
2007.01.14 アケビ油復活
2006.06.29 アケビの油は油の王様
2005.08.06 キャリアオイルの化学