昨日の投稿に対して、コメントいろいろいただきどうもありがとうございました。

現実問題として、各医療機関では、アロマテラピーを取り入れたいが、科学的根拠や位置づけがまだはっきりしていないなどの理由から、現場では、個人的なボランティア活動が続いている様子がうかがわれます。

そもそも、医療機関を指導する立場にある厚生労働省では、「
アロマテラピー」をどのように考えているのか、非常に興味のあるところです。そこで、今から5年ほど前に、「現在のアロマテラピーにおける行政の考え方(200.07.06)」というタイトルで掲載した記事をご紹介したいと思います。

これは、フレグランスジャーナル社、「aromatopia」vol.9/no.4/2000(通巻第41号)p2、アロマトピア巻頭言にて紹介されているものを参照しました。

介護現場におけるアロマセラピーの臨床実践に関する質問に対する答弁(内閣参質一四七第三九号、平成十二年六月二十日、内閣総理大臣 森喜朗)

質問主意書

● 介護現場におけるアロマセラピーの臨床実践に関する質問主意書

現在、薬による副作用の多発や薬漬け等からくる現代医療に対する不安が高まっている。一方で、介護保険の導入に伴って、被介護保険者の生活の質を向上せしめ、活力を喚起させるアロマセラピー(芳香療法)が我が国でも注目を集め始めている。

既に英国では、香りの効用と精油の薬理作用に着目してターミナルケア・ホスピス・リハビリ等にアロマセラピーを取り入れており、代替医療の一手段として定着してきている。また、フランスやベルギー等ではアロマセラピーに精通した医師が診断・処方し、患者は薬局で精油を購入して用いており、精油を薬剤の素材として扱っている。

我が国においても「日本アロマセラピー学会」、「日本アロマケア学会」、「日本アロマテラピー協会」等、数多くの関係団体が設立され、アロマセラピーの学術的発展のための調査・啓蒙活動が行われるようになった。その結果、アロマセラピー導入の成功例が数多く報告されている。

これら諸団体の研究から、アロマセラピーを積極的に介護現場に導入した場合、補助(補完)的医療効果と薬剤としての医療効果が期待できると考えられる。なお、補助(補完)的医療効果とは、良い香りによって人の心を穏やかにし、安らぎを与えることや、トリートメントマッサージによって人と人が触れ合い、信頼感・安心感・開放感がもたらされ、「心の癒し」につながる等の効果である。また、薬剤としての医療効果とは、精油自体が持つ抗菌力・免疫力等により未病・予防環境が整う等の効果である。

しかし、現在の医療従事者関連諸法・薬事法等にはセラピストの資格はもとより、方法として用いる精油の安全基準さえ何一つ明確に提示されていない。このような現況では、実際にアロマセラピーを病院や介護施設等で導入することは困難である。

そこで、以下質問する。

質問と答弁書

● 一 アロマセラピーの補助(補完)的医療効果と薬剤としての医療効果をどの程度認識しているのか。

平成九年度の厚生科学研究費補助金により行われた「健康保養医学の健康増進効果に関する精神・神経・内分泌・免疫学的評価に関する研究」において、一定の香りのある環境での休息が作業能率の低下の抑制に有効であった旨の報告がなされていることは承知しているが、お尋ねのアロマセラピー一般については、いまだその定義が確立されておらず、その医学的効果も明らかではないと認識している。

● 二 アロマセラピーは西洋医療を補完するいわば代替医療であると考えるが、アロマセラピーは医療なのかどうか。医療であるとすれば、アロマセラピーは医療としてどのような位置付けにあるのか。

医療とは、一般に、疾病の治療を中心として、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含むものであると考えられているところであるが、お尋ねのアロマセラピーについては、その定義及び治療効果に関する医学的効果が確立されておらず、医療であるかどうかを判断することは困難である。

● 三 アロマセラピーが医療であるとすれば、これを施せるのは誰か。現在アロマセラピーを施せる資格はあるのか。ないとすれば、アロマセラピーを施せる資格を設ける見込みはあるか。

医師法(昭和二十三年法律第二百一号)は、医師以外の者が、医業(医行為(医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為をいう。)を業とすることをいう。)を行うことを禁止し、また、保健婦助産婦看護婦法(昭和二十三年法律第二百三号)は、保健婦、助産婦、看護婦又は准看護婦以外の者が、診療の補助行為を業として行うことを禁止している。

お尋ねのアロマセラピーが医行為又は診療の補助行為に該当するのであれば、医師又は看護婦等の資格を有する者のみが業として行うことができることとなるが、アロマセラピーが医行為又は診療の補助行為に該当するかどうかについては、アロマセラピーの定義が明らかにされた上で具体的行為に基づいて判断すべきものであるので、その定義が確立されていない現時点において、アロマセラピーを業として行うに当たり医師又は看護婦等の資格が必要かどうかを一概に判断することはできない。

また、新たにアロマセラピーを業として行う資格を設けることについては、アロマセラピーが医行為又は診療の補助行為に該当するかどうかが明らかでなく、その治療効果に関する医学的評価が確立されていない現時点において、検討を行う考えはない。

● 四 精油の品質・性質をどの程度把握しているのか。
● 五 現在精油は大半が雑貨として輸入されている。精油は薬剤又は薬剤の素材であるのか、雑貨であるのか。薬剤であるとすれば、精油は薬剤としてどのような位置付けにあるのか。

精油(植物から抽出される芳香性かつ揮発性を有する油をいう。)の一部には、香料等として医薬品に使用されているもの又は健胃作用等の薬理作用を示すものがあり、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第四十一条に規定する日本薬局方(平成八年三月十三日厚生省告示第七十三号)に収載されているが、これらについては、使用目的が食品用等に限定される場合を除き、同法第二条第一項に規定する医薬品に該当する。

また、御指摘のような「精油自体が持つ抗菌力・免疫力等により未病・予防環境が整う等」の効能又は効果を標榜するものは医薬品に該当すると考えられるが、このような効能又は効果を有する医薬品は承認されていない。

さらに、精油には、医薬品、同法第二条第二項に規定する医薬部外品又は同条第三項に規定する化粧品の原料として使用されているものがある。

これら以外の精油については、品質及び性質を承知していない。

● 六 精油が薬剤であるとすれば、これを扱えるのは誰か。現在精油を扱える資格はあるのか。ないとすれば、精油を扱える資格を設ける見込みはあるのか。

医療品に該当する精油を医業、診療の補助又は薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)に規定する調剤に用いる場合にあたっては、医師、保健婦、助産婦、准看護婦又は薬剤師が取り扱う必要があるが、これら以外に、精油を取り扱うに際しての資格制度はなく、また、新たな資格制度を設ける考えもない。

● 七 精油の安全基準等国内ガイドライン策定の準備はあるか。

医薬品に該当する精油については、薬事法第十四条第一項の規定に基づき製造の承認の申請があった場合に、必要な審査等を行うこととしており、精油一般について安全基準等のガイドラインを策定する考えはない。

● 八 福祉・介護の専門研究機関が特別養護老人ホーム・老人保健施設等と連携してアロマセラピーの臨床実践を行うことについての政府の見解と展望を示されたい。

痴呆性高齢者に対する介護技術に関する研究、研修等を行うことを目的として、現在、三か所の「高齢者痴呆介護研究センター」(以下「センター」という。)を整備しているところであり、平成十三年度から本格的に事業を開始する予定としている。

センターにおいては、併設する特別養護老人ホーム、老人保健施設等を活用して、介護サービスの提供現場における臨床的な研究を積極的に進めることとしており、具体的な研究課題については、お尋ねのアロマセラピーも含め、各センターに設置される運営協議会を中心に今後検討されることとなる。

以上が質問と答弁書の内容です。皆さんはどのように「
アロマテラピー」を位置づけておられますでしょうか。

二 の質問と答弁の通り「
代替医療や補完医療」を、定義や治療効果に関する医学的効果が確立されていないということで、判断することができない旨を答弁していますが、最近では、いろいろな民間療法といわれている分野の実態調査を始めたともいわれています。

いずれにしても、精油やハーブ、そしてそれらの植物を利用する学問体系である「
アロマテラピー」や「植物療法」が、治療や薬として認識された時点から、すなわち、定義や治療効果に関する医学的効果が確立された時点から、医師法や薬事法が適用されるのではないでしょうか。とても難しい問題ですね。